公開日:2026年9月8日
自己PRは「自分をよく見せる欄」ではありません。応募先が仕事を任せられるかどうかを判断するための材料を、短く渡す欄です。ここを飾ると、面接で自分の首を絞めます。この記事では、材料の集め方から、限られた行数に収める型まで、順に確認していきます。
まず、履歴書に「自己PR欄」は独立していません
厚生労働省が2021年4月に公表した様式例では、この部分の欄名は「志望の動機、特技、好きな学科、アピールポイントなど」です。志望動機・特技・自己PRがひとつの枠に同居しています。市販の履歴書には自己PR欄が独立しているものもありますが、まず手元の様式がどちらかを確認してください。志望動機の組み立て方は志望動機の書き方で解説しています。
欄がひとつなら、志望動機が主役です
枠がひとつしかない場合、優先順位は志望動機が先、自己PRは後です。応募先が最初に知りたいのは「なぜうちに応募したのか」で、能力の説明はその次だからです。志望動機を書いて余白があれば、その分だけアピールを足す、という配分にします。
職務経歴書があるなら、そちらが本番です
中途採用で職務経歴書も提出する場合、自己PRの詳細はそちらに書きます。履歴書側で長い自己PRを書くと、同じ話が2枚に重複します。履歴書は要約、職務経歴書が本体という関係にしてください。職務経歴書側の書き方は職務経歴書の書き方で解説しています。
自己PRと志望動機は、答えている問いが違います
この2つが混ざると、どちらも中途半端になります。答えている問いで分けてください。
| 欄 | 答えている問い | 主語になるもの |
|---|---|---|
| 志望動機 | なぜこの会社なのか | 応募先 |
| 自己PR | 自分に何ができるのか | 自分の経験 |
見分け方は簡単です。書いた文章から会社名を抜いても意味が通るなら、それは自己PRです。逆に、自分の経験を抜いても成立するなら、それは会社への感想であって志望動機になっていません。
混ざった文章の例
御社の教育体制に魅力を感じており、持ち前の明るさを活かして貢献したいと考えております。
前半は会社への感想、後半は性格の申告で、どちらも仕事ができる根拠になっていません。分けて書くと次のようになります。
【志望動機】未経験からの育成を前提とした募集であることと、研修後も定期的に振り返りの場があると求人票にあった点に惹かれました。 【自己PR】前職の受付業務では、1日平均40件の来客対応と電話取次を並行して担当しました。取次のミスが月に数件あったため、伝言の記録用紙を項目別に作り直し、担当者への引き渡しまでを手順化したところ、以降は同じミスが起きていません。
材料を3つ集めてから書きます
自己PRが書けない原因は、文章力ではなく材料不足です。書き始める前に次の3つを箇条書きで出してください。
材料1:具体的な行動
「頑張った」「工夫した」ではなく、実際にやった動作を書き出します。作り直した、聞き取った、手順にした、教えた、確認を入れた、順番を変えた。この粒度まで下ろすと、あとで文章にできます。
材料2:数字
1つでよいので数字を探します。件数、人数、期間、頻度、金額、割合のどれかです。売上のような大きな数字である必要はありません。「1日40件」「3年間」「月に2回」でも、話の輪郭がはっきりします。
材料3:再現性の根拠
その行動を、応募先でも同じようにできる理由です。使った道具や環境が違っても、判断の仕方が同じなら再現できます。ここが抜けると「前の会社ではすごかった人」で終わってしまいます。
型は「結論・根拠・再現性」の3つです
順番を変えないでください。読み手は最初の1文で内容を判断します。
| 順番 | 書くこと | 目安 |
|---|---|---|
| ①結論 | 自分は何ができるか(1文) | 40〜60字 |
| ②根拠 | そう言える経験と数字 | 80〜120字 |
| ③再現性 | 応募先でどう活きるか | 40〜60字 |
組み立てた例(経験のある職種へ応募)
手順が定まっていない業務を、続けられる形に整えることができます。 前職の総務では、備品の発注が担当者の記憶で行われており、欠品と重複購入が毎月起きていました。使用量を3か月分記録して発注点を決め、発注表を共有フォルダに置いたところ、欠品はその後1年間ありませんでした。 貴社でも、まず現状の手順を書き出すところから入り、引き継げる形にしていきたいと考えております。
組み立てた例(未経験の職種へ応募)
初めて会う相手から、必要な情報を聞き出すことができます。 前職の携帯販売では、料金プランの相談で来店された方に、まず利用状況を伺ってから提案する形をとっていました。用件を先に整理することで説明が短くなり、1件あたりの応対時間が平均で10分ほど短くなりました。 未経験の分野ですが、相手の状況を先に聞くという進め方は、貴社の営業でも同じだと考えております。
文字数は欄の大きさで決まります
「自己PRは300字」といった一律の目安はあてになりません。履歴書は欄の大きさが決まっているので、そこに収まる量が正解です。
| 様式 | 目安 | 考え方 |
|---|---|---|
| 志望動機と同じ欄(厚労省様式例) | 全体で200〜300字 | 志望動機を優先し、余白にアピールを足す |
| 自己PR欄が独立している | 150〜250字 | 欄の7〜8割が埋まる量 |
| 職務経歴書の自己PR | 300〜400字 | 履歴書より詳しく書く |
欄の半分以下しか埋まっていないと、準備不足に見えます。逆に、枠外にはみ出したり、文字を極端に小さくして詰め込んだりするのも読みにくくなります。7〜8割を目安にしてください。
職種によって、見せる面が変わります
同じ経験でも、応募先が求めるものに合わせて切り取る面を変えます。嘘を書くのではなく、順番を入れ替えるだけです。
| 応募先 | 優先して見せる面 |
|---|---|
| 営業 | 相手の要望を引き出したこと、数字で追った経験 |
| 事務 | 正確さ、手順を整えたこと、期限を守った実績 |
| 販売・接客 | 混雑時の対応、クレームの収め方、リピートにつなげた工夫 |
| 製造・技術 | 不良や手戻りを減らした経験、安全と品質への向き合い方 |
| 介護・医療 | チーム内の連携、記録の正確さ、利用者や家族との関わり方 |
応募先ごとに書き換えます
自己PRは、根拠の部分(自分の経験)は共通で使えます。書き換えるのは結論の一文と、再現性の一文です。この2か所だけなら、1社あたり10分ほどで調整できます。応募先が変わっても同じ文面のまま出すと、どの会社にも当てはまる文章になり、誰の記憶にも残りません。
書くことがないと感じたときの探し方
「成果」ではなく「困りごと」から探します
表彰や大きな売上がなくても構いません。職場で困っていたことと、それに自分がどう対処したかを思い出してください。仕事の大半はその積み重ねで、採用側もそこを見ています。
人から言われたことを思い出します
「あなたに頼むと早い」「あの件は助かった」と言われたことがあれば、それが他人から見えている強みです。自己評価より正確なことがあります。
アルバイト経験でも構いません
職歴が短い場合、アルバイトや学生時代の経験を使って問題ありません。大切なのは肩書ではなく、そこで何を判断してどう動いたかです。
避けたほうがよい書き方
- 性格だけを書く。「明るい」「責任感がある」は、根拠がないと申告で終わります。
- 努力の量を強調する。「誰よりも早く出社し」は、成果ではなく時間の話です。
- 会社への貢献を約束する。「必ず売上に貢献します」は、まだ何も知らない段階の言葉として響きません。
- 例文をそのまま写す。読み慣れた採用担当者にはすぐ分かります。面接で掘り下げられて答えられなくなります。
- 短所を長く書く。聞かれていないところで自分の弱点を説明する必要はありません。
書き終えたあとの確認
- 最初の1文だけを読んで、何ができる人か伝わるか
- 数字が1つ以上入っているか
- 会社名を抜いても、自己PRとして成立するか
- 面接で「その件を詳しく」と聞かれて、5分話せるか
- 職務経歴書と食い違っていないか
- 欄の7〜8割が埋まっているか
最後の項目以外がすべて満たせていれば、量が少なくても通用します。逆に、量が足りていても最初の1文がぼやけていると読み飛ばされます。
アルバイト・パートに応募する場合
長さは3〜4行で十分です
アルバイトの応募で、正社員と同じ密度の自己PRを書く必要はありません。応募先が知りたいのは、続けて来られるか、任せた仕事を覚えられるか、他のスタッフと問題なくやれるかの3点です。ここに答える形で3〜4行にまとめれば足ります。
経験がない場合の書き方
初めての応募であれば、仕事の経験以外から書いて構いません。部活動で続けたこと、家庭や学校で任されていた役割、通っていた期間の長さなど、続けられたことが分かる材料を選びます。「未経験ですが頑張ります」だけで終えると、他の応募者と区別が付きません。
飲食店での接客は未経験ですが、3年間続けた新聞配達では、早朝の時間を一度も遅れずに守ってきました。決まった時間に決まったことを行う仕事であれば、確実にお応えできます。
シフトの話は本人希望記入欄へ
働ける曜日や時間帯は、自己PRではなく本人希望記入欄に書きます。この2つを混ぜると、どちらも読みにくくなります。
書いたあと、面接でどう使われるか
面接の質問は、書いた文章から作られます
採用担当者は、提出された書類に線を引きながら質問を用意します。自己PRに書いた出来事は、ほぼ確実に掘り下げられると考えてください。「そのとき、他にどんな方法を考えましたか」「同じことをもう一度やるとしたら、どこを変えますか」といった質問が続きます。
盛った内容は、そこで崩れます
実際より大きく書いた部分は、この掘り下げで必ず露見します。書類が通っても、面接で説明できなければ意味がありません。書けることが小さくても、自分の言葉で最後まで説明できる内容を選んでください。それが結果的に、いちばん強い自己PRになります。
白紙のまま手が止まっているときは
Rirekisyでは、志望の動機・特技・アピールを入力する欄に「AIで作成」のボタンを置いています。入力済みの内容をもとに文章の下書きを作る機能で、白紙から書き始めるより手がかりが得やすくなります。
ただし、出てきた文章をそのまま提出するためのものではありません。体裁を整える用途に留め、経験の中身と数字は必ず自分のものに置き換えてください。面接で話すのは自分です。書いた本人が説明できない文章は、書類が通ったあとで不利になります。
よくある質問
Q. 自己PR欄が空欄だと不利になりますか
不利になります。特に厚生労働省の様式例では志望動機と同じ欄なので、そこが空欄だと応募理由まで書いていないことになります。1〜2行でも構わないので、必ず埋めてください。
Q. 志望動機と自己PRを両方書くと、欄からあふれます
削る順番は決まっています。まず入社後の抱負を短くし、次に自己PRの根拠を1つに絞ります。志望動機の結論(最初の1文)は削りません。
Q. 前職を1年で辞めています。自己PRに書けることがありません
期間の長さと、書ける中身は別です。1年でも担当した業務はあり、そこで困ったこととその対処は必ずあります。短い期間だからこそ、早く覚えるためにやった工夫が材料になります。
Q. アルバイト経験を自己PRに書いてもよいですか
構いません。職歴が少ない場合はむしろ有効です。「アルバイトだから」と断りを入れる必要もありません。何を任され、どう対処したかを書いてください。
Q. 資格を自己PRに書いてもよいですか
免許・資格欄に書いたものを繰り返す必要はありません。資格を使って何をしたかまで書けるなら、自己PRの材料になります。
Q. 数字が出せない仕事です
売上や件数でなくても構いません。担当した人数、対応した期間、1日あたりの処理数、削減できた時間など、数えられるものを探してください。
Q. 職務経歴書と履歴書で、自己PRの文章は同じでよいですか
同じ内容で構いませんが、長さを変えてください。履歴書は要約、職務経歴書は詳細です。まったく同じ文章を2枚に貼ると、書類全体が薄く見えます。
Q. 転職回数が多く、経験がばらばらです
すべてを書こうとせず、応募先に関係するものだけを選んでください。共通している行動(初めての環境で早く戦力になる、など)を軸にすると、ばらばらの経歴が1本につながります。
Q. 「貴社」と「御社」はどちらを書きますか
書面では貴社、話し言葉では御社です。履歴書は書面なので貴社を使います。
Q. ブランクがあります。自己PRで触れるべきですか
自己PRの欄で説明する必要はありません。空白期間の事情は職歴欄や面接で扱う話です。自己PRは、いま何ができるかに集中してください。ブランク中に学んだことがあり、応募先の仕事に直接つながるなら、その部分だけを材料として使います。
Q. 手書きの場合、下書きはどうすればよいですか
別の紙に文章を確定させてから、清書として履歴書に書き写してください。履歴書に直接書きながら考えると、行数が合わなくなったときに書き直しになります。文字数を数えるより、1行あたりの文字数で目安を取ると収まりやすくなります。
Q. 応募先が求める人物像に、自分が当てはまりません
全部が当てはまる応募者はほとんどいません。当てはまる部分だけを前に出し、足りない部分は、これから埋める見込みが立つことを短く添えてください。当てはまらない項目について、こちらから長く言い訳をする必要はありません。