公開日:2026年9月9日

プロデューサー職の職務経歴書は、作った物ではなく、動かした規模と、破綻させずに着地させた過程を見せる書類です。判断の中身を書くディレクター職とは、書くべきものが違います。何を数字にすればよいかから整理していきます。
プロデューサーは「成立させた人」として読まれます
制作の現場で、プロデューサーやプロダクションマネージャーが評価されるのは、案件を成立させ、破綻させずに終わらせたことです。表現の良し悪しはディレクターやデザイナーの領域なので、そこを職務経歴書の中心に置くと、役割が混ざって見えます。ディレクター職の書き方はクリエイティブディレクターの職務経歴書で解説しています。
読む側が確かめたいこと
- どのくらいの規模を扱えるか(予算・体制・期間・本数)
- 誰と、どう調整してきたか(クライアント、社内、外部スタッフ)
- 崩れかけた案件をどう着地させたか
この3つが読み取れれば、それだけで面接に進みます。逆に、案件名だけが並んでいると、規模も役割も分からないため判断ができません。
規模は、4つの数字で示します
プロデューサー職では、数字が最も強い材料になります。ただし売上や利益は出せないことが多いので、出せる数字から書いてください。
| 数字 | 書き方の例 |
|---|---|
| 予算 | 1案件あたり数百万円〜3,000万円規模/年間の制作予算 約2億円を管理 |
| 体制 | 社内3名・外部10〜15名/協力会社5社 |
| 期間 | 企画から納品まで平均4か月/最長10か月 |
| 本数 | 年間20〜30本/同時進行 常時5〜8件 |
この4つが揃っていると、読み手はあなたの仕事の大きさをほぼ正確に把握できます。「大型案件を担当」と書くより、はるかに具体的です。
実数を出せない場合
金額をそのまま書けないときは、幅で書くか、規模の表現に置き換える形で構いません。「数千万円規模」「年間で二桁本数」といった書き方でも、規模は十分伝わります。書けない理由は、後述する一文で示しておきます。
案件一覧の作り方
プロデューサー職では、案件を表で一覧にすると読みやすくなります。文章で並べるより、規模の幅が一目で分かるためです。
| 時期 | 案件(業種) | 役割 | 規模 |
|---|---|---|---|
| 2024年 | 飲料メーカー/Web動画シリーズ | プロデューサー | 予算 数千万円規模/外部12名/4か月 |
| 2023年 | 金融/サービスサイト立ち上げ | プロデューサー | 予算 数千万円規模/社内3名・外部8名/8か月 |
| 2022年 | アパレル/店頭販促ツール一式 | プロダクションマネージャー | 年間30点/協力会社4社 |
載せるのは代表的な5〜8件で足ります。全部を並べると読まれません。応募先の領域に近いものを上に置いてください。
外注管理と交渉の書き方
この職種で差が出るのが、人とお金をどう動かしたかの部分です。「進行管理を担当」だけでは、日程表を作っていた人にしか見えません。
| 弱い | 強い |
|---|---|
| 外部スタッフの手配を担当 | カメラマン・編集・音楽の3職種について、案件ごとに2〜3社から見積を取り、条件と稼働を突き合わせて選定 |
| スケジュール管理を担当 | 撮影と編集の工程が重なる時期に、編集の着手日を分散させる形で工程を組み直し、外注費を追加せずに納期を維持 |
| クライアントとの折衝 | 仕様追加の要望に対し、費用と納期の影響を提示したうえで、優先度の低い2機能を次フェーズへ送る合意を取り付けた |
| 予算管理を担当 | 案件ごとの原価表を作り、着地見込みを月次で更新。年間を通じて予算超過ゼロで運用 |
崩れかけた案件の書き方
プロデューサーの実力がいちばん出るのは、うまくいかなかった案件をどう着地させたかです。ここを1件書いておくと、面接での話が深くなります。
書く形
【状況】主要スタッフの離脱により、撮影の2週間前に体制が崩れた 【対応】撮影日を動かさない前提で、当該工程を2社に分割して発注し直した 【結果】納期を維持。追加費用は当初予算の5%以内に収めた
注意点が2つあります。ひとつは、誰かのせいにしないこと。前任者や協力会社を責める書き方は、読む側に「この人は自分の会社でも同じことを言うだろう」と受け取られます。もうひとつは、結果まで書くこと。対応だけ書いて着地が書かれていないと、収まったのかどうかが分かりません。
守秘義務の線引き
制作の仕事では、案件名も金額も出せないことが日常的にあります。出せないものは出さないでください。守秘を守れない応募者だと判断されると、それ自体が不採用の理由になります。
| 出せないもの | 言い換え |
|---|---|
| クライアント名 | 大手飲料メーカー/国内金融機関 |
| 予算の実数 | 数千万円規模/年間で億単位 |
| 未公開の案件 | 書かない |
| 協力会社の社名 | 協力会社5社(映像制作・音響・印刷 ほか) |
冒頭か末尾に「守秘義務のため、一部の案件名および数値は伏せて記載しています。面接時に可能な範囲でご説明します」と一文添えておいてください。これがあるだけで、書いていないことが手抜きではないと伝わります。
職務要約は、規模から書きます
冒頭3〜5行で、読み手はその後を読むかどうかを決めます。プロデューサー職では、最初の1行に規模を置くと効きます。
制作会社で7年間、Web・映像の制作プロデューサーとして、1案件あたり 数百万円〜数千万円規模、社内外あわせて5〜15名の体制で、年間20〜30本を 担当してきました。直近は同時進行5〜8件の予算と工程を管理し、 外部パートナーの選定から納品までを一貫して担当しています。 事業会社側で、制作の内製化と外注の使い分けを設計する立場を志望します。
様式は逆編年式が向くことが多いです
職務経歴書には、古い順に書く編年式と、新しい順に書く逆編年式があります。プロデューサー職は直近ほど扱う規模が大きいことが多いので、逆編年式のほうが読み手に伝わりやすくなります。2つの様式の違いは職務経歴書の書き方で解説しています。
ただし、アシスタントから始めて役割が上がっていった流れそのものを見せたい場合は、編年式のほうが自然です。見せたいものに合わせて選んでください。
書き始める前の棚卸し:案件表を作ります
プロデューサー職の職務経歴書が書けないときの原因は、数字が手元にないことです。文章を考える前に、表を作ってください。
1.案件を年ごとに並べる
まず、年と案件名だけを並べます。この段階では中身を書きません。思い出す作業と、書く作業は分けてください。
2.4つの数字を埋める
並べた案件それぞれに、予算・体制の人数・期間・本数を入れていきます。正確な数字が思い出せないものは、幅で構いません。ここで空欄が多い案件は、載せる優先度が低いものです。
3.自分の役割を1語で入れる
プロデューサーだったのか、プロダクションマネージャーだったのか、アシスタントだったのか。肩書きが変わった時期が分かる形にしてください。役割が上がっていった流れは、それ自体が読み手への説明になります。
4.印象に残っている1件を選ぶ
最後に、崩れかけたが着地させた案件を1つ選び、状況・対応・結果を3行で書きます。全案件に書く必要はありません。1件あれば足ります。
手元に記録が残っていない場合
過去の案件表や請求書が手元にないことはよくあります。その場合は、覚えている範囲の幅で書いてください。「数百万円〜1,000万円程度」という書き方でも、規模は伝わります。思い出せない数字を、それらしく作らないことだけ守ってください。面接で聞かれたときに答えられなくなります。
制作会社と事業会社では、読まれ方が違います
同じ職務経歴書でも、応募先が制作会社か事業会社かで、注目される部分が変わります。
| 制作会社が見るところ | 事業会社が見るところ | |
|---|---|---|
| 数字 | 同時進行の本数、回転の速さ | 予算の規模、管理の精度 |
| 関係 | クライアントとの折衝力 | 外注先の選定・管理の経験 |
| 期待 | 案件をさばききること | 内製と外注の設計、社内の調整 |
| 着地 | 納期を守ること | 予算を守ること |
事業会社に応募するなら、発注側の視点を書きます
制作会社から事業会社へ移る場合、「外注先を選び、管理してきた」経験が最も効きます。見積の比較、条件の交渉、複数社の使い分け——このあたりを職務要約に入れておくと、受け取られ方が変わります。
逆に、事業会社から制作会社へ移る場合は、クライアント側の意思決定がどう動くかを知っていることが強みです。そこを書いてください。
ディレクター職との書き分け
ディレクターとプロデューサーを兼ねてきた方は、案件ごとにどちらの立場だったかを明記してください。混ざったまま書くと、どちらの職種として応募しているのかが分からなくなります。
| プロデューサーとして書くこと | ディレクターとして書くこと | |
|---|---|---|
| 中心 | 規模・体制・予算・納期 | 表現の判断、方向づけ |
| 成果 | 成立させたこと、着地させたこと | 選んだ方向と、その理由 |
| 数字 | 金額・人数・本数・期間 | 制作物の点数、体制の人数 |
よくある書き方の失敗
| 失敗 | どう受け取られるか |
|---|---|
| 案件名だけを並べる | 規模も役割も分からない。判断ができない |
| 数字がひとつもない | この職種では、ほぼ材料がないのと同じ |
| 「進行管理を担当」で終える | 日程表を作る人にしか見えない |
| 表現の話が中心になっている | ディレクター職として読まれ、役割が混ざる |
| トラブルの原因を人のせいにしている | 自社でも同じことを言うだろう、と受け取られる |
| 守秘に触れる数字を書いている | それ自体が不採用の理由になり得る |
「担当しました」を減らします
職務経歴書全体を読み返して、「担当しました」で終わっている行を数えてみてください。多いほど、情報量が少ない書類になっています。担当した結果どうなったか、何を決めたか、どのくらいの規模だったか——どれか1つを足すだけで、行の重さが変わります。
応募先ごとに書き換えるのは2か所です
職務経歴書を応募先ごとに一から書き直す必要はありません。変えるのは職務要約と、案件一覧に載せる案件の選び方だけです。
| 変える | 変えない |
|---|---|
| 職務要約(最後の1行=志望の方向) | 経歴の事実 |
| 案件一覧の並び順と、載せる案件 | 各案件の記述そのもの |
この2か所を入れ替えるだけなら、1社あたり15分程度で終わります。同じ書類を出し続けるより、この15分のほうが効きます。
履歴書側の扱い
履歴書は厚生労働省の様式例に沿った標準的なもので構いません。凝った様式を自作する必要はありません。証明写真も、スーツで撮った標準的なもので問題ありません。
Rirekisyで作る場合
Rirekisyでは、履歴書と職務経歴書を同じ画面で作れます。ロゴの横のトグルで切り替える形で、氏名・連絡先・学歴といった共通の項目は、片方に入れればもう片方にも引き継がれます。
職務経歴書の様式は「編年式」「逆編年式」の2種類から選べます。直近の規模を先に見せたいなら逆編年式を試してみてください。
職務要約と自己PRには「AIで作成」があります(自己PRは、強みのキーワードを入力してから使う形です)。ただし出てくるのは体裁の整った下書きで、あなたが扱った予算も、体制の人数も、崩れかけた案件をどう着地させたかも、AIは知りません。白紙から書き始めるのがつらいときの足がかりとして使い、数字と経験は必ず自分で埋めてください。数字の入っていない要約は、この職種ではほとんど意味を持ちません。
入力の途中で画面を閉じても内容はその端末に残るので、過去の案件表を確認しに行って戻ってきても、続きから書けます。
よくある質問
Q. 予算額を書けません。どう示せばよいですか
幅や規模の表現で構いません。体制の人数、期間、本数も規模を示す数字になります。
Q. 案件一覧は何件載せますか
代表的な5〜8件で足ります。応募先の領域に近いものを上に置いてください。
Q. アシスタント期間はどう書きますか
担当していた工程を具体的に書けば十分です。「アシスタント」という肩書きだけで終わらせないでください。
Q. 失敗した案件を書くと不利になりませんか
着地まで書けていれば、むしろ強い材料になります。人のせいにしない書き方であることが条件です。
Q. 制作会社から事業会社へ移りたいのですが
外注を使う側と使われる側の両方を知っていることが強みになります。発注側の視点で書けることを職務要約に入れてください。
Q. ポートフォリオは必要ですか
プロデューサー職では必須ではありません。求められた場合は、案件一覧と、公開されている成果物のリンクで足ります。
Q. ディレクターも兼ねていました。両方書いてよいですか
書いて構いませんが、案件ごとにどちらの立場だったかを明記してください。混ざると役割が分からなくなります。
Q. 職務経歴書は何枚が適切ですか
1〜2枚です。案件一覧を入れると2枚になりやすいので、文章のほうを削ってください。
Q. フリーランス期間があります
屋号または「個人事業主として」と書き、取引先の業種、担当範囲、扱った規模を並べてください。
Q. 応募先ごとに書き換える必要はありますか
職務要約と、案件一覧に載せる案件の選び方を変えてください。この2か所だけで印象が変わります。