クリエイティブディレクターの職務経歴書 書くのは判断の中身

公開日:2026年9月9日

ディレクター職の職務経歴書は、作った物を並べる書類ではありません。同じ制作物でも、企画から入ったのか、決まった方向を形にしたのかで、書き手の価値はまったく違います。何を判断したかが読み取れる形に組み替えていきます。

図解:クリエイティブ職は、作品名ではなく「判断の中身」を書く。読む側が知りたいのは関与の範囲・意思決定の中身・体制の3つで、「〜に携わりました」は避ける

作品を並べる書類ではありません

ディレクター職の応募でよくあるのが、担当した案件の名前が並んでいるだけの職務経歴書です。読む側は有名な案件名を見て「すごい」とは思いますが、そこからあなたが何をした人なのかは分かりません。職務経歴書の基本の型は職務経歴書の書き方で解説しています。

大きな案件ほど関わった人数は多く、企画を立てた人、方向を決めた人、形にした人、進行を管理した人が別々にいます。案件名だけでは、そのうちのどれだったのかが伝わらないのです。進行や体制を担う側の書き方は制作プロデューサーの職務経歴書で解説しています。

読む側が知りたいのは3つです

  1. どこからどこまでを担当したか(関与の範囲)
  2. その中で何を判断したか(意思決定の中身)
  3. 何人を、どう動かしたか(体制の中での立ち位置)

制作物そのものはポートフォリオが見せます。職務経歴書が担うのは、その裏側にあった判断のほうだと考えてください。

関与の度合いを、正しく書き分けます

もっとも避けたいのは、実際より広く見える書き方です。面接で細部を聞かれると、ほぼ確実に崩れます。

関与の度合い書き方
企画から関わり、方向を決めたコンセプト設計から担当。表現の方向性を決定
決まった方向を形にした決定済みのコンセプトに基づき、ビジュアル設計とデザインを担当
チームの一員として一部を担当キービジュアルの制作を担当(全体設計は別担当)
進行を管理した制作進行および外部スタッフの手配を担当

「(全体設計は別担当)」のような一言を入れることを恐れないでください。範囲を正直に書いた経歴書のほうが、面接での話が深くなります。広げて書くと、そこを確認する質問に時間を取られ、本来話したい判断の中身にたどり着けません。

「何を判断したか」の書き方

ディレクターの仕事の中身は、選ばなかった選択肢にあります。そこを書けると、他の応募者と明確に差が付きます。

書く形

「状況 → 判断 → 結果」の3つを1〜3行にまとめます。

【状況】既存顧客向けの認知が頭打ちで、若年層への接点が薄い状態だった
【判断】タレント起用ではなく、ユーザーの投稿を軸にした構成に切り替えた
【結果】想定していた露出量を、制作費を増やさずに確保した

弱い書き方と、強い書き方

弱い強い
ブランドサイトのリニューアルを担当回遊率が低い原因を導線ではなく初見の情報量と判断し、トップの要素を3分の1に削る構成に変更
広告キャンペーンのクリエイティブディレクション訴求軸が3つに割れていたため、購入前の不安に絞る方針へ統一。制作物9点の表現をこの1軸で揃えた
チームをまとめました社内2名・外部4名の体制で、デザイン方針の決定と各成果物のレビューを担当

数字は、出せる範囲で

成果を数字で示せると説得力が上がりますが、出せない数字を無理に書く必要はありません。代わりに使えるのは、制作物の点数、体制の人数、期間、扱った媒体の種類といった規模を表す数字です。これらは守秘に触れにくく、読み手が仕事の大きさを把握できます。

守秘義務の線引き

クリエイティブ職では、案件名や数字を出せないことがよくあります。出せないものは出さないでください。守秘を守れない応募者だと判断されると、それだけで見送りになります。

言い換えの型

出せないもの言い換え
クライアント名大手食品メーカー/国内アパレルブランド
売上の実数前年同期比で二桁の伸び(実数は非公開)
予算額数千万円規模
未公開の案件書かない。公開済みのものだけで構成する

職務経歴書の冒頭か末尾に、「守秘義務のため、一部の案件名および数値は伏せて記載しています。面接時に可能な範囲でご説明します」と一文添えておくと、書いていないことが手抜きではないと伝わります。

ポートフォリオとの役割分担

この職種では、職務経歴書とポートフォリオの2つを出すのが一般的です。役割を分けないと、同じ内容が2つ並ぶことになります

職務経歴書ポートフォリオ
見せるもの経歴の流れ、関与範囲、判断の中身制作物そのもの
単位会社・所属ごと案件ごと
1〜2枚絞って10点前後
役割何ができる人かを説明するその説明を裏づける

職務経歴書にURLを載せる場合

ポートフォリオをWebで公開している場合は、職務経歴書の冒頭にURLを1行で載せてください。ページの中に埋もれると見落とされます。パスワードをかけている場合は、URLと一緒にその旨を書き、面接時に伝える形にします。

URLを載せるときは、提出前に、ログアウトした状態で開けるか確認してください。自分の端末では見えるが他人からは見えない、という事故がよく起きます。

ポートフォリオの絞り方

職務経歴書と役割を分けたうえで、ポートフォリオ側も整理が要ります。点数が多いほど良い、という書類ではありません

10点前後に絞ります

見る側は1件あたり数十秒しかかけません。30点並べても、見られるのは最初の数点です。応募先の領域に近いものを前に置き、10点前後に絞ってください。

1点ごとに、3行の説明を添えます

制作物だけを並べても、何をした人かは伝わりません。1点につき次の3つを添えてください。

  • 案件の前提——業種、目的、制約(1行)
  • 自分の役割——どこからどこまでを担当したか(1行)
  • 判断した点——何を決めたか、なぜそうしたか(1行)

この3行があるだけで、同じ制作物でも受け取られ方が変わります。説明のないポートフォリオは、作品集であって応募書類ではありません

公開されていないものは載せません

未公開の案件、社内限定の制作物、クライアントの承諾がないものは載せないでください。載せてよいものだけで構成できないなら、点数を減らします。守秘を守れない応募者だと判断されるほうが、点数が少ないことより不利です。

様式は逆編年式が向くことがあります

職務経歴書には、古い順に書く編年式と、新しい順に書く逆編年式があります。ディレクター職では、直近の役割がいちばん大きいことが多いため、逆編年式が向きます。読み手は最初の10行で判断するので、いま何ができる人かを先に置く形になります。

逆に、制作会社から事業会社へ、といったキャリアの流れそのものを見せたい場合は編年式が向きます。どちらが正解ということはなく、見せたいものに合わせて選んでください

肩書きが会社によって違う場合

クリエイティブの職種名は、会社によって指す範囲が違います。同じ「ディレクター」でも、企画から入る会社と、進行を見る会社があります。肩書きをそのまま書くだけでは、読み手に誤解されます。

肩書きのあとに、範囲を1行添えます

アートディレクター(コンセプト設計から、社内外5〜8名のデザイン統括まで)
ディレクター(企画には関与せず、決定済み方針に基づく制作進行を担当)

括弧の中身が、読み手にとっての本体です。肩書きは名刺の情報でしかないと考えて、必ず範囲を添えてください。

肩書きがなかった場合

小規模な会社やフリーランスでは、明確な肩書きがないことがあります。その場合は実際にやっていた役割を書いてください。「デザイナー兼ディレクター」のように併記しても構いません。実態と離れた肩書きを名乗るより、そのほうが信用されます。

職務要約は、冒頭3〜5行で

職務経歴書の冒頭に置く要約は、読み手がその後を読むかどうかを決める部分です。ここに全部を詰め込まず、次の3点だけを書きます。

  1. 何年、どういう領域でやってきたか
  2. いま何を任されているか
  3. 応募先で何ができると考えているか
広告制作会社で8年間、アートディレクターとして紙媒体とWebの広告制作に
従事してきました。直近3年はコンセプト設計から関わり、社内外あわせて
5〜8名の体制でデザイン方針の決定とレビューを担当しています。
事業会社でブランド全体の表現を一貫して設計する立場に移りたいと考えています。

書き始める前の棚卸し

職務経歴書がうまく書けないときの原因は、文章力ではなく材料が手元にないことです。書き始める前に、次の順で材料を出してください。

1.案件を時系列で並べる

まず、年と案件名だけを並べます。この段階では中身を書きません。思い出す作業と、書く作業を分けるのが要点です。同時にやろうとすると、どちらも中途半端になります。

2.各案件に、立場と体制を書き足す

並べた案件それぞれに、自分の肩書き、関わった範囲、体制の人数を書き足します。この時点で、書けない案件が出てきます。関与が浅かったものです。それは載せなくて構いません。

3.判断した場面を思い出す

残った案件について、「決めた」「変えた」「やめた」場面を探します。次の質問が手がかりになります。

  • 最初の案から変わった点はあるか。なぜ変えたか
  • やらないと決めたことはあるか
  • 意見が割れた場面で、どちらを選んだか
  • 時間や予算の制約で、何を落としたか

ここで出てきたものが、職務経歴書の中身になります。制作物の説明ではなく、この部分が読まれます

4.応募先に近いものを前に出す

材料がそろったら、応募先の領域に近い案件を上に置き直します。並べ替えるだけで、読まれ方が変わります。応募先ごとに書き直すのはこの部分と職務要約だけで、他は使い回せます。

よくある書き方の失敗

失敗どう受け取られるか
案件名だけを並べる何をした人か分からない。有名な案件ほど、関与が疑われる
関与範囲を広く書く面接の細部の質問で崩れる。信用を失う
制作物の説明が長いポートフォリオと重複。読む時間を奪う
「〜に携わりました」で終える何をしたか特定できない。もっとも避けたい表現
抽象的な言葉が多い「世界観を構築」「ブランド価値を向上」だけでは中身が伝わらない
枚数が多い3枚を超えると後半は読まれない

とくに「携わりました」は、この職種でもっとも情報量の少ない言葉です。企画から入ったのか、指示どおり作ったのか、進行を見ていたのか——全部がこの一語に収まってしまいます。使いそうになったら、そこを具体的に書き直す合図だと考えてください。

履歴書側の扱い

ディレクター職でも、履歴書は厚生労働省の様式例に沿った標準的なもので構いません。凝った様式を自作する必要はありません。表現力はポートフォリオで見られるので、履歴書は読みやすさだけを確保してください。

証明写真も、スーツで撮った標準的なもので問題ありません。ここで個性を出す必要はないと考えてください。

Rirekisyで作る場合

Rirekisyでは、履歴書と職務経歴書を同じ画面で作れます。ロゴの横のトグルで切り替える形で、氏名・連絡先・学歴といった共通の項目は、片方に入れればもう片方にも引き継がれます

職務経歴書の様式は「編年式」「逆編年式」の2種類から選べます。ディレクター職なら逆編年式を試してみてください。

職務要約と自己PRには「AIで作成」があります(自己PRは、強みのキーワードを入力してから使う形です)。ただし出てくるのは体裁の整った下書きで、あなたが何を判断したかは書けません。それはAIが知りようのない情報だからです。白紙から書き始めるのがつらいときの足がかりとして使い、中身は必ず自分の経験に置き換えてください。AIが書いた文章のまま出すと、面接で細部を聞かれたときに答えられなくなります。

入力の途中で画面を閉じても内容はその端末に残るので、案件の記録を確認しに行って戻ってきても、続きから書けます。

よくある質問

Q. 案件名を出せません。書くことがなくなります

案件名がなくても、業種・規模・体制・判断の中身は書けます。むしろそちらが読まれる部分です。

Q. ポートフォリオがあれば、職務経歴書は簡単でよいですか

よくありません。ポートフォリオは制作物を見せるだけで、関与範囲と判断は伝わりません。両方が必要です。

Q. 何案件くらい書けばよいですか

職務経歴書は所属ごとにまとめ、代表的な案件を各社2〜3件で足ります。並べすぎると読まれません。

Q. デザイナーからディレクターへ移りたいのですが

手を動かした実績に加えて、方針を決めた場面、他の人の成果物をレビューした場面を探して書いてください。規模は小さくても構いません。

Q. フリーランス期間があります

屋号または「個人事業主として」と書き、主な取引先の業種と担当範囲を並べてください。契約形態は書いておくと親切です。

Q. 賞歴は書いたほうがよいですか

応募先の領域に関係するものなら書いてください。数が多い場合は代表的なものに絞ります。

Q. 職務経歴書は何枚が適切ですか

1〜2枚が読まれる分量です。3枚を超えると、後半はほとんど読まれません。

Q. ポートフォリオのURLはどこに載せますか

冒頭に1行で載せてください。提出前に、ログアウトした状態で開けるか確認しておきます。

Q. 応募先ごとに書き換える必要はありますか

職務要約と、載せる代表案件の選び方は変えてください。応募先の領域に近いものを前に出すだけで、読まれ方が変わります。

Q. 履歴書もデザインを凝ったほうがよいですか

必要ありません。読みやすい標準的な様式で構いません。表現はポートフォリオで見られます。

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