公開日:2026年9月4日

転職エージェントは、登録すれば勝手に良い求人が集まってくる仕組みではありません。何社に登録するか、担当者とどう付き合うか、書類をどこまで任せるか。この3つの判断で、得られるものが大きく変わります。仕組みの理解から順に見ていきます。
まず、仕組みを知っておきます
なぜ無料で使えるのか
転職エージェントは、求職者から料金を取りません。採用が決まったときに、採用した企業から成功報酬を受け取る仕組みだからです。金額は、決まった人の想定年収の3割前後が目安とされます。
この構造は、使う側にとって知っておく価値があります。エージェントの収益は「誰かが採用されること」で発生するため、担当者には決めたいという動機が働きます。良い担当者はそのうえで求職者の希望に沿って動きますが、そうでない場合、決まりやすい求人へ誘導されることがあります。
これは悪意の話ではなく、構造の話です。誘導されていると感じたら断ればよいだけなので、最初から知っておけば困りません。
求人サイト・ハローワークとの違い
| 転職エージェント | 求人サイト | ハローワーク | |
|---|---|---|---|
| 求人の探し方 | 担当者が紹介する | 自分で検索する | 自分で検索する/窓口で相談 |
| 非公開の求人 | ある | ない | ない |
| 書類の添削 | 受けられる | ない | 受けられる |
| 面接日程の調整 | 代行してもらえる | 自分でする | 自分でする |
| 年収の交渉 | 代行してもらえる | 自分でする | 自分でする |
| 求人の傾向 | 採用にコストをかけられる企業が中心 | 幅広い | 地域の中小企業が多い |
それぞれ得意な領域が違うので、どれか1つに絞る必要はありません。エージェントに登録しつつ、求人サイトでも自分で探す、という併用が現実的です。
複数登録は何社が適正か
1社だけに絞ると何が起きるか
1社だけに登録すると、その会社が扱っている求人しか見えません。エージェントごとに取引先が違うため、業界や職種によっては、扱っている求人の顔ぶれが大きく変わります。
もうひとつ大きいのが、担当者が1人に固定されることです。相性が合わなかった場合、比較する相手がいないので「転職エージェントとはこういうものか」と受け止めてしまいます。
目安は2〜3社
複数登録の適正数は、2〜3社が現実的な目安です。理由は求人の幅ではなく、時間の問題です。
エージェントに登録すると、初回面談(1時間前後)、求人の紹介、応募の可否の返答、面接日程の調整、といったやり取りが発生します。これが登録した数だけ並行して走ります。4社、5社と増やすと、対応するだけで平日の夜が埋まり、肝心の書類の準備や企業研究に手が回らなくなります。
総合型と特化型を組み合わせる
2〜3社を選ぶときは、同じ性格の会社を並べても意味がありません。次のように組み合わせます。
- 総合型を1〜2社:幅広い業界・職種を扱っています。求人数が多く、自分では思いつかなかった選択肢が出てくることがあります。
- 特化型を1社:業界(IT、医療、建設など)や属性(第二新卒、ハイクラスなど)に絞って扱っています。その領域の事情に詳しく、企業ごとの内情まで踏み込んだ話が聞けることがあります。
行きたい方向がすでに決まっているなら特化型の比重を上げ、まだ絞れていないなら総合型から始めるのが素直です。
増やしすぎたときに起きること
- 同じ求人を複数のエージェントから紹介される。どこから応募したか分からなくなります。
- 連絡の管理が破綻する。どの担当者に何を伝えたかが混ざります。
- 選考の進み方がばらつく。1社目の結果を待つあいだに、別のエージェント経由の選考が最終まで進んでしまう、といったことが起きます。
複数登録するなら、応募先・応募日・経由したエージェント・選考状況を1つの表で管理してください。手元のメモでも表計算ソフトでも構いません。この管理をしないなら、登録は2社までにしておくほうが安全です。
同じ企業に複数のエージェントから応募しない
これは避けてください。企業側では同一人物の応募が2件届くことになり、どちらのエージェントを窓口にするかで話がこじれます。応募者本人の管理能力を疑われる結果にもなります。
紹介された求人が、すでに別のエージェント経由で応募済みの企業だった場合は、その場で「別の会社経由で応募済みです」と伝えてください。隠す理由はありません。
担当者との相性
合わないと感じるサイン
担当者は選べません。登録した時点で割り当てられます。次のような状態が続くなら、相性の問題として扱ってよい段階です。
- 希望していない業界・職種の求人ばかり送られてくる
- 「まずは受けてみましょう」と、応募の判断を急かされる
- 質問への返答が遅い、または返ってこない
- 企業の内情を聞いても、求人票に書いてあること以上が出てこない
- こちらの経歴を正確に把握していない(面談で話したことが伝わっていない)
一方で、次のようなものは相性の問題ではありません。厳しいことを言われるのと、合わないのは別です。
- 希望年収が市場と合っていないと指摘される
- 職務経歴書の書き直しを求められる
- 応募先を絞るよう勧められる
担当者を替えてもらう方法
担当者の変更は、多くのエージェントで受け付けています。担当者本人に言う必要はありません。問い合わせ窓口(カスタマーサポート、公式サイトの問い合わせフォーム)へ連絡します。
伝え方は、人格の話にせず、事実で書くと通りやすくなります。
- 「希望している職種と異なる求人のご紹介が続いており、方向性を合わせ直したいと考えております。担当の方の変更をご相談できますでしょうか」
- 「連絡の行き違いが重なっており、選考のスケジュールに影響が出ています。担当の方をご変更いただくことは可能でしょうか」
変更を申し出ることで、そのエージェントから紹介を受けられなくなることはありません。窓口にとっては通常の運用の範囲です。
替えても変わらないとき
担当を替えても状況が変わらない場合、その会社が扱う求人の傾向と、自分の希望が合っていない可能性があります。担当者個人ではなく、会社の得意領域の問題です。この場合は、別の性格のエージェント(総合型を使っていたなら特化型)へ移すほうが早く解決します。
面談で何を伝え、何を聞くか
最初の面談で伝えること
初回の面談は、担当者があなたの経歴と希望を把握する場です。ここで曖昧に答えると、そのあと届く求人がずれます。次の4つは、面談の前に自分の言葉でまとめておいてください。
- これまでの仕事の中身。会社名と役職だけでなく、何を担当し、どんな結果になったか。
- 転職する理由。今の職場の何を変えたいのか。
- 譲れない条件と、譲れる条件。年収、勤務地、職種、働き方のうち、どれが優先か。
- 転職の時期。いつまでに決めたいか。在職中か離職中か。
特に3つ目が重要です。「全部大事です」と答えると、担当者は優先順位を推測して求人を選ぶことになり、ずれが生まれます。
聞いておくとよいこと
- その企業が、なぜこのポジションを募集しているのか(増員か、欠員の補充か)
- 過去にそのエージェント経由で入社した人がいるか、その後どうしているか
- 選考の回数と、どのくらいの期間がかかるか
- 面接で何を重く見られるか
これらは求人票には書かれていない情報で、エージェントを使う価値が出るところです。答えられない担当者であれば、その求人の情報を持っていないということになります。
応募書類はエージェント任せにしません
エージェントは履歴書や職務経歴書の添削をしてくれます。ただし、添削は「書いたものを直す」作業であって、代わりに書いてもらう作業ではありません。自分で書くときの型は職務経歴書の書き方で解説しています。
職務経歴の中身を知っているのは本人だけです。担当者が書ける範囲は、体裁と表現の整理までです。中身が薄いまま体裁だけ整えても、面接で必ず崩れます。面接官が掘り下げてくるのは、書類に書かれた具体的な部分だからです。書類が通らないときの見直し方は書類選考に通らないときの見直し方で解説しています。
順番としては、まず自分で一度完成させ、それから見てもらうのが正しい使い方です。白紙の状態で面談に行くと、面談の時間が経歴の聞き取りだけで終わってしまい、求人の話に入れません。
Rirekisyでは、基本情報・学歴・職歴・免許資格・志望動機・希望条件の6ステップを埋めると、厚生労働省の様式例に沿った履歴書のPDFができます。職務経歴書も同じ画面から作れて、氏名や学歴といった共通項目は履歴書から引き継がれるので、2枚のあいだで記載がずれません。面談の前に、まずここまで作っておくと話が早く進みます。
登録から内定までの流れ
全体の流れを知っておくと、どの段階で何を準備すればよいかが分かります。会社によって呼び方は違いますが、おおむね次の順です。
- 登録:Webのフォームで、経歴と希望条件を入力します。ここで入力した内容をもとに、担当者が事前に求人を用意します。空欄が多いと、面談が聞き取りだけで終わります。
- 初回面談:担当者と話します。対面、オンライン、電話のいずれかで、1時間前後です。経歴の確認と、希望条件のすり合わせをします。
- 求人の紹介:面談の内容をふまえて求人が送られてきます。数日以内に届くのが一般的です。
- 応募:応募したい求人を選び、担当者に伝えます。担当者が企業へ書類を出します。
- 書類選考:結果は担当者から届きます。
- 面接:日程の調整は担当者が代行します。面接の前に、その企業の傾向を聞いておきます。
- 内定・条件の提示:年収や入社日の交渉を担当者が代行します。
- 入社日の調整と退職手続き:在職中の場合、退職の進め方も相談できます。
複数のエージェントを使う場合、この流れが並行して走ります。3社に登録すれば初回面談が3回あり、それぞれ1時間前後かかります。登録は同じ週にまとめるより、1社ずつ間隔をあけるほうが、面談の質が上がります。1社目の面談で自分の説明のしかたが整理されるためです。
エージェント経由の応募で、書類がどう扱われるか
エージェント経由で応募すると、提出した履歴書・職務経歴書は担当者を通して企業へ渡ります。ここで知っておきたいことが2つあります。
推薦文が添えられます
多くの場合、担当者が「推薦状」や「推薦コメント」と呼ばれる文章を添えて企業に出します。応募者の経歴のどこが求人に合っているかを、担当者の言葉で説明したものです。
この推薦文の中身は、初回面談で担当者が受け取った情報だけで書かれます。面談で伝えきれなかった強みは、推薦文にも載りません。面談を軽く済ませると、書類の通過率がそのまま下がります。
書類は自分の手元にも残しておきます
担当者に渡したあと、その内容を自分が把握していないと、面接で答えがぶれます。提出したものと同じPDFを、必ず自分でも持っておいてください。
また、エージェントごとに提出する書類の様式が指定されることがあります。指定様式に書き写すことになっても、元になる内容は1つにまとめておくと、会社ごとに記載が食い違う事故を防げます。
エージェントを使わないほうがよい場合
次のような場合は、エージェント以外の手段のほうが向いています。
- 応募したい企業がすでに決まっている:その企業の採用ページから直接応募するほうが早く、企業側の採用コストもかかりません。
- 地域の中小企業や、地元の事業所を探している:エージェントの取引先に入っていないことがあります。ハローワークや地域の求人媒体のほうが見つかります。
- アルバイト・パートを探している:転職エージェントは正社員の紹介が中心です。
- 今すぐは動かないが情報だけ集めたい:担当者は転職時期を前提に動くため、意向が固まっていない段階では双方の時間が合いません。求人サイトで相場を見るほうが向いています。
よくある質問
Q. 複数登録していることは、担当者に伝えるべきですか
聞かれたら正直に伝えてください。多くの担当者は、複数登録が普通であることを前提に動いています。隠していると、同じ求人を重複して紹介されたときに説明がつかなくなります。
Q. 紹介された求人を断り続けると、紹介が止まりますか
理由を伝えずに断り続けると、希望が読み取れないため紹介の精度が上がりません。「勤務地が条件と合わない」「この職種は経験を活かせない」と、断る理由を添えてください。理由が積み重なるほど、次の紹介が合ってきます。
Q. 在職中でも使えますか
使えます。むしろ在職中の利用が中心です。連絡可能な時間帯を最初に伝えておくと、勤務中に電話がかかってくる事態を避けられます。
Q. 内定を辞退したいのですが、エージェント経由だと言いにくいです
辞退の連絡は担当者を通して行います。担当者が企業へ伝えるので、自分で企業に直接連絡する必要はありません。引き止められることはありますが、決めるのは本人です。辞退を伝える時期は、決めた時点でできるだけ早くしてください。
Q. 登録したあと、使わなくなったらどうすればよいですか
退会の手続きができます。放置しても大きな問題はありませんが、求人の連絡が届き続けます。転職活動を終えたら、決まった旨を伝えて退会するのが筋です。