公開日:2026年9月7日

本人希望記入欄は、書くことがないのに空欄にもできない、という点で扱いに困る欄です。結論としては、多くの場合「貴社の規定に従います」の一文で足ります。ただし、書いておかないと選考が進んでから困ることもあります。その線引きを整理します。
この欄の正式な名前
厚生労働省の様式例では、この欄は「本人希望記入欄(特に給料・職種・勤務時間・勤務地・その他についての希望などがあれば記入)」となっています。括弧の中がそのまま答えです。給料・職種・勤務時間・勤務地について、伝えておく必要があることを書く欄です。
「希望を通すための欄」ではなく、企業が採用の判断をするうえで知っておく必要のある事情を伝える欄だと考えると、書くべきかどうかの判断がつきます。
基本は「貴社の規定に従います」
特に伝えるべき事情がなければ、次の一文で構いません。
貴社の規定に従います。
これは投げやりな回答ではなく、条件面で交渉するつもりはないという意思表示として通じる定型句です。多くの応募者がこの一文を書きます。
空欄にしてはいけません
希望がない場合でも空欄は避けます。読む側からは「書き忘れ」か「書けなかった」のどちらかに見えるためです。履歴書全体を通して、空欄は書き漏れの疑いを生みます。
「特になし」も避けたほうが無難です。意味は通じますが、他の欄(免許・資格欄など)で使う表現なので、この欄では「貴社の規定に従います」のほうが収まります。
書いておくべきこと
次に当てはまる場合は、必ず書いてください。伝えないまま進むと、あとで双方が困ります。
複数の職種を募集していて、希望がある
営業職を希望いたします。
1つの求人で複数の職種を募集している場合、どれに応募したのかが分からないと振り分けができません。求人票に職種の記載が複数ある場合は書いてください。
勤務地が複数あり、通えない場所がある
勤務地は、現住所から通勤可能な東京都内の事業所を希望いたします。
全国転勤がある会社で、事情があって動けない場合も、この欄で伝えます。
家族の介護のため、当面のあいだ転居を伴う異動は難しい状況です。
言いにくい内容ですが、入社後に判明するより、応募の段階で伝えるほうが結果的に良い方向に働きます。書き方は事実だけを短く、要求ではなく事情として書きます。
連絡がつく時間帯に制約がある
在職中のため、平日は18時以降にご連絡いただけますと幸いです。
在職しながらの転職活動では、これは書いておく価値があります。日中に電話が取れず折り返しが続くと、選考の進行が遅れます。在職中の応募で気をつけることは在職中の転職の進め方にまとめています。
入社できる時期が決まっている
現職の引き継ぎのため、内定より1か月後の入社を希望いたします。
すぐに働ける場合は書く必要はありません。時期に制約があるときだけ書きます。
健康上の配慮が必要
週に1度、通院のため時間の配慮をお願いできますと幸いです。
業務に支障が出ない範囲であれば、病名まで書く必要はありません。必要な配慮の内容だけを書きます。
雇用形態に希望がある
正社員としての採用を希望いたします。
正社員と契約社員を同時に募集している場合などに書きます。
書かないほうがよいこと
希望年収
応募先から指定がない限り書きません。給与の話は面接以降の段階です。この欄に金額を書くと、条件が合わないという理由だけで書類の段階で外される可能性があります。
ただし、求人票に「希望給与を明記のうえご応募ください」とある場合は書きます。その場合は現職の年収を基準に、「現職の年収〇〇万円を考慮のうえ、貴社規定に従います」といった書き方が無難です。
細かい条件の羅列
× 残業は月10時間以内を希望します。 土日祝は必ず休みたいです。 有給休暇は取得しやすい環境を希望します。
並べるほど「条件が合わなければ辞める人」という読まれ方に近づきます。求人票に書かれている条件は、そもそも合意済みなので書く必要がありません。書くのは、求人票の条件から外れる事情がある場合だけです。
職場環境や人間関係への要望
「アットホームな職場を希望します」「風通しの良い環境で働きたいです」といった内容は、この欄には書きません。希望条件ではなく感想だからです。
前職の不満
「前職は残業が多かったため」といった説明はこの欄でしません。転職理由は面接で聞かれます。
状況別の書き方まとめ
| 状況 | 書くこと |
|---|---|
| 特に希望がない | 貴社の規定に従います。 |
| 複数職種の募集 | 希望職種を1つ書く |
| 勤務地に制約がある | 通える範囲、または動けない事情を1行で |
| 在職中で日中つながらない | 連絡可能な時間帯 |
| 入社時期に制約がある | 入社可能な時期 |
| 健康上の配慮が必要 | 必要な配慮の内容のみ |
| アルバイトで勤務曜日・時間に希望 | 働ける曜日と時間帯 |
| 求人票で希望年収を求められた | 現職の年収を添えて「貴社規定に従います」 |
アルバイト・パートの場合
アルバイトやパートの応募では、この欄の役割が変わります。勤務できる曜日と時間帯は、採用の可否に直接関わる情報なので、書くのが前提です。アルバイトの履歴書全体の書き方はアルバイトの履歴書の書き方で解説しています。
勤務可能日:月・水・金・土 勤務可能時間:平日17時〜22時、土曜9時〜18時 即日勤務可能です。
ここを曖昧にすると、シフトを組めるかどうか判断できず、連絡が後回しになります。正確に、具体的に書いてください。学生の場合、試験期間やテスト週の扱いも一言添えておくと親切です。高校生の場合の書き方は高校生のアルバイトの履歴書で解説しています。
そのまま使える文例集
希望がない・条件面を任せる
貴社の規定に従います。
職種・勤務地ともに貴社の規定に従います。
職種・勤務地の希望を伝える
営業職を希望いたします。
希望職種:経理職 希望勤務地:本社(東京) 上記以外の条件は貴社の規定に従います。
連絡の時間帯を伝える
在職中のため、平日は18時以降、または土日にご連絡いただけますと幸いです。
日中は電話に出られないことがございます。恐れ入りますが、 つながらない場合はメールにてご連絡いただけますと幸いです。
入社時期を伝える
現職の引き継ぎのため、内定より1か月後の入社を希望いたします。
即日勤務が可能です。
勤務時間・日数に制約がある
子どもの送迎のため、9時30分から16時までの勤務を希望いたします。
家族の介護のため、当面のあいだ転居を伴う異動は難しい状況です。 それ以外の条件は貴社の規定に従います。
健康上の配慮
月に1度、通院のためお休みをいただきたく存じます。 業務に支障はございません。
希望年収を求められた場合
現職の年収は〇〇〇万円です。貴社の規定に従います。
アルバイト・パートの応募
勤務可能日:月・水・金・土 勤務可能時間:平日17時〜22時、土曜9時〜18時 即日勤務可能です。
扶養の範囲内(年間〇〇万円以内)での勤務を希望いたします。
欄がない・書ききれない場合
本人希望記入欄がない様式を使っている
伝えたい事情がある場合は、次のどれかで補います。
- 送付状(添え状)に1行添える。郵送のときに使えます。
- 応募メールの本文に書く。「なお、在職中のため平日は18時以降のご連絡をいただけますと幸いです」のように、末尾に1行足します。
- 応募フォームの備考欄に書く。
書きたいことが3つ以上ある
優先順位をつけて、選考に影響するものだけに絞ります。目安として、書くのは2つまでです。それ以上あるなら、面接で相談する形にしてください。書類の段階で条件が多いと、条件面の調整が難しい応募者と受け取られます。
面接で条件を伝えるタイミング
履歴書に書かなかった条件は、面接のどこで伝えるかが問題になります。
| 伝える内容 | タイミング |
|---|---|
| 勤務時間・曜日の制約 | 一次面接。早いほうがよい |
| 転勤の可否 | 一次面接。聞かれなければ逆質問で確認 |
| 入社可能時期 | 一次面接、または聞かれたとき |
| 健康上の配慮 | 一次面接。業務に関わるものだけ |
| 給与・待遇 | 最終面接以降、または内定後の条件提示のとき |
給与以外は早めに伝えます。選考が進んでから条件が合わないと分かると、双方の時間が無駄になります。逆に給与の話を序盤で持ち出すと、条件を優先する応募者と受け取られやすくなります。
書き方のコツ
- 1行から3行で収めます。長くなるほど条件の多い人に見えます。
- 要求ではなく事情として書きます。「〜してください」ではなく「〜のため、〜いただけますと幸いです」です。
- 丁寧語で書きます。この欄だけ箇条書きにしても構いませんが、文体は他の欄と揃えます。
- 複数ある場合は改行して並べます。1文に詰め込むと読みにくくなります。
よくある質問
Q. 「貴社の規定に従います」と書くと、何でも受け入れる意味になりますか
条件面で最初から交渉するつもりはない、という意味です。面接で条件を確認したり、内定後に相談したりする余地はなくなりません。
Q. 「御社」と「貴社」のどちらを使いますか
書き言葉なので「貴社」です。話し言葉が「御社」です。病院は「貴院」、学校法人は「貴校」、銀行は「貴行」になります。
Q. 本人希望記入欄がない履歴書を使ってもよいですか
使えます。ただし伝えたい事情がある場合は書く場所がなくなるので、送付状(添え状)に1行添えるか、応募のメール本文に書きます。
Q. 転勤できないと書くと、落とされませんか
その可能性はあります。ただし、書かずに入社して転勤を打診されるほうが困ります。全国転勤が前提の会社であれば、応募の段階で分かるほうが双方にとって良い結果になります。
Q. 面接で希望を伝えるので、履歴書には書かなくてよいですか
面接まで進めるなら、それでも構いません。ただし連絡可能な時間帯だけは書いておくことをおすすめします。面接の日程調整の連絡が取れず、そのまま流れてしまうことがあります。
Q. 複数社に応募していることは書きますか
書きません。この欄に書く内容ではありません。聞かれたときに正直に答えれば十分です。
Q. 「特になし」と書いてはいけませんか
意味は通じますが、免許・資格欄で使う表現なので、この欄では「貴社の規定に従います」のほうが収まります。突き放した印象も避けられます。
Q. 希望を書くと、わがままだと思われませんか
選考に必要な情報であれば、書いたほうが親切です。判断の基準は「伝えないまま採用されたら困ることか」です。困ることなら書きます。困らないことなら書きません。
Q. 在職中であることは、この欄に書きますか
連絡の時間帯に制約があるなら書きます。制約がなければ書く必要はありません。在職中かどうかは職歴欄の「現在に至る」で分かります。
Q. 勤務地の希望を書いたら、書類で落とされました
条件が合わなかったということなので、書いていなければ面接まで進めたかもしれませんが、その後に条件が合わずに終わっていた可能性が高い状況です。早い段階で分かったぶん、時間の損失は小さくなっています。
Q. アルバイトで「シフトは応相談」と書いてもよいですか
避けてください。採用する側はシフトが埋まるかどうかを見ています。「応相談」だと判断できないので、連絡が後回しになります。入れる曜日と時間を具体的に書いてください。
Q. 家庭の事情を、どこまで書きますか
必要な配慮の内容だけです。事情の詳細は書きません。「子どもの送迎のため16時までの勤務を希望」で十分で、家族構成まで書く必要はありません。
Q. 書いた希望は、入社後に変更できますか
相談の余地はありますが、採用の前提になっている条件(勤務時間や勤務地)は、変えると調整が必要になります。応募の時点で無理のない条件を書いてください。合わせすぎると、あとで自分が困ります。
Q. 「即日勤務可能」と書くと、急かされているように見えませんか
見えません。むしろ採用する側にとっては有利な情報です。すぐに人が必要な求人では、この一文があるだけで連絡が早くなります。
Q. 副業をしています。書くべきですか
応募先が副業を認めているかどうかによります。求人票や就業規則で禁止されていないことを確認したうえで、続ける前提なら書いておくほうが安全です。書く場合は「現在、〇〇の副業を行っております」と事実のみを記します。
Q. 資格取得のために通学しています。書きますか
勤務時間に影響するなら書きます。「毎週土曜は通学のため勤務が難しい状況です」のように、勤務条件として書いてください。学習していること自体は、免許・資格欄か志望動機で触れます。
Q. この欄に自己PRを書いてもよいですか
書きません。自己PRは志望動機の欄か、職務経歴書に書きます。この欄は勤務条件を伝える場所なので、用途の違うものを入れると読み手が混乱します。
Q. 在宅勤務を希望する場合はどう書きますか
求人票に在宅勤務の記載があるなら、この欄に希望を書いて構いません。「週2日程度の在宅勤務を希望いたします」のように書きます。記載がない求人に希望だけを書くと、条件が合わない応募と受け取られます。
Q. 書いた内容は面接で必ず聞かれますか
条件に関わるものは、ほぼ確実に確認されます。「転勤が難しいとありますが、どのくらいの期間でしょうか」といった形です。書いた内容は、口でも説明できるようにしておいてください。